1. Home
  2. 知ろう!学ぼう!
  3. 英国王立動物虐待防止協会(RSPCA)

知ろう!学ぼう!

英国王立動物虐待防止協会(RSPCA)

先日ブリオは、「動物との共生を考える連絡会」さん主催の、「動物の福祉を守る英国の法律-実例を踏まえて」に参加してきました。
講師は、英国王立動物虐待防止協会(RSPCA)の国際部門担当のポール専門官と、告発訴訟担当のフィル専門官のお二人です。RSPCAの歴史や現在の活動、動物福祉の向上と法律、そして査察官のお話しを学びました。

英国王立動物虐待防止協会(RSPCA)

まずは動物福祉における「科学的検証のための基本概念」が説明されました。

Tタッチが考案されて30年ほど経ちますが、現在世界何カ国くらいでTタッチが使われていますか?また日本では、だいたいどのくらいの人たちに普及していますか。

  • 動物たちにとっての「苦痛」は学術的に計測可能である
  • 動物たちの「行動」が、動物福祉を測る指標になる
  • 動物福祉学は、国際的にも学術の対象であること
  • 世界の政府には「動物福祉(向上)」に関する政府機関や省庁をもっていること
  • 動物福祉に関する法律や規範が、日々作られていること

そのうえで、英国の法律では、「虐待」が以下のように1849年に制定された動物福祉法で下記のように定義されてます。

動物に対する直接的な暴力・虐待行為 / ネグレクト

その「虐待」に含まれるのは大きく分けて2つ。

ひとつは「動物に対する直接的な暴力・虐待行為」
もうひとつは「適切な飼養を行わないこと(ネグレクト)」。

ということで、いわゆる「その動物の生態を無視した不適切な飼い方をすること」も虐待になります。
治せるのに治療せずひどい皮膚病のまま放置する、などもネグレクトにあたります。

動物の基本的ニーズ

その動物たちは、これまで生き延びてきた環境の中で、完璧なかたちに進化してきた、いわゆる動物の中でも「勝ち組」です。それらをふまえて、私たちが飼養した際に、その種本来の生活スタイルが実現できているかを、飼い主が認識する必要があります。
以下は「動物の基本的欲求」です。

  • 生理的:食事や水は足りているか、生活スペースは適温か?
  • 行動的:巣づくりや冬眠が必要な生き物か?
  • 社会的:単独か群れか、仲間を探す生き物か?
  • 環境:充分なスペースがあるか?
  • 心理的:退屈の軽減はできているか、刺激はあるか?

これらを実現させてあげられない環境下で飼うことは、ともすれば「虐待」ともいえるでしょう。

4つのツール

RSPCAがこだわっているのは、「科学的見地から動物虐待を防ぐ」ことです。そのためRSPCAには、各専門の30の科学的スタッフがいます。
とかく、動物愛護や、動物福祉の活動が「かわいそうだから」とか、「動物が好きだからみていられない…」という『感情論』で、相手を説得しようと試みるのですが、それでは動物に関心のない人や、むしろ動物嫌いな人には納得してもらえません。どのような人にも理解が得られるような『科学的な証拠や根拠』を踏んで、相手に動物の状況を理解してもらう必要があります。
以下は、RSPCAが動物福祉を向上させるために、動物たちが今ある状況を「計測」するための4つのツールです。

1,適正(適切)→不適正(不適切)→虐待
その動物にとって、その環境下にあることが適正なものなのか、それとも法には反しないものの不適切と呼ぶべきものなのか、あるいは明らかに法律に違反するような「虐待」となるものかを判断する。
2,人間にとっての利益 or 動物にとっての害悪
人間の健康に貢献する薬品等の検査に供される実験動物や、食に供される産業動物など動物に与えられる苦痛が、人間の益のために、やむを得ず行うことが避けられないものかを判断する。
3,動物にとっての基本的要求
食餌・水・温度・広さ・家や巣の状態・行動様式敵対動物から隠れられる場所・退屈しない刺激等、動物の本来持つ欲求が満たされているかどうか。
4,動物たちの「5つの自由」

「5つの自由」に基づく動物福祉の評価表 Animal Welfare Assessment by 注* RSPCA, WOAH

  • 飢えや乾きからの自由(解放)
    • 動物が、きれいな水をいつでも飲めるようになっていますか?
    • 動物は、健康を維持するために栄養的に充分な食餌を与えられていますか?
  • 肉体的苦痛と不快からの自由(解放)
    • 動物は、適切な環境下で飼育されていますか?
    • その環境は、常に清潔な状態が維持できていますか?
    • その環境に鋭利な突起物のような危険物がないですか?
    • その環境には、風雪雨や炎天を、避けられる屋根や囲いの場所はありますか?
    • 快適な休息場所がありますか?
  • 外傷や疾病からの自由(解放)
    • 動物は、痛み、外傷、或いは疾病の徴候を示していませんか?
      もしそうであれば、その状態が診療され、適切な治療が行なわれていますか?
  • 恐怖や不安からの自由(解放)
    • 動物は、恐怖や精神的な苦痛(不安)の徴候を示していませんか?
      もし、そのような徴候を示しているなら、その原因を確認できますか?
      その徴候をなくすか軽減するために的確な対応がとれますか?
  • 正常な行動を表現する自由
    • 動物は、正常な行動を表現するための充分な広さが与えられていますか?
      作業中や輸送中の場合、動物が危険を避けるための機会や休憩が与えられていますか?
    • 動物は、その習性に応じて、群れあるいは単独で飼育されていますか?
      また、離すことが必要である場合には、そのように飼育されていますか
  • (注)
    RSPCA:Royal Society for the Prevention of Cruelty to Animals(英国王立動物虐待防止協会)
    WOAH:World Organization for Animal Health(世界動物保健機関)

       

これら4つのスケールから、個々の事例を「検証し」、著しく不適切、もしくは虐待に相当するケースにおいては動物たちをそこから救出することが、目的となり上記のスケールについて、社会に広く「啓発」することが動物を虐待から救うための、有効なアプローチだといいます。

そして、これらのスケールは社会の成熟度、動物に対する社会的認識、文化的な背景等により、異なったり、時代と共に変化していくものだとしています。

RSPCAの査察部について

RSPCAでは、現場職員の明確な「職域」の規定があり、いわゆる虐待から動物を救う最前線で「実際の現場に向かう人たち(査察部)」は、3つの区分に分かれています。

RSPCAの査察部について

inspector
(査察官)
通報により査察をし、ケースファイルを作り、深刻な現場では その場から動物を救い出し、危険から回避させ、しかるべき施設(病院や保護施設)に移送し、そのケースが告訴にいたるような場合に法廷で証言する役割を担います。330名。
animal welfare officer
(動物福祉担当官)
それほど喫緊な対応が必要でない通報にたいして、査察官の指示のもと、現場に向かって聞き取り調査をしたり、インスペクターに同行し現場での円滑な活動を助手をする。 130名
animal collection officer
(動物引き取り官)
主に動物の保護回収業務を担当。病院や保護施設などへの搬送等を行う。 50名

それぞれの仕事は明確に区分され、現場でどのような仕事をする担当なのかがはっきりしているため、RSPCAとして統一した対応ができる基盤となっています。

特に査察官は、動物虐待のシビアな現場に飛び込んでいくために、「高度な知識」「人間的に豊かな素養」が必要となり、RSPCAのもとで教育を受け、組織として求められるレベルをクリアーしなければ査察官にはなれません。

RSPCAでは、年間120万件の動物に関する電話等での連絡を受け、その中の15万1千件の虐待通報への対応としてinspector(査察官)に引き渡します。
そしてそこから重篤な犯罪である約2000件を告発し、(現場によっては告発案件が重複するため4100件の罪状)その中で1500人がその罪状で有罪判決を受けます。

その結果、驚くべきことに「勝訴率98%」を達成し、動物を虐待する恐れのある人には、しかるべき法的な処罰を受けてもらいます。

査察の流れ

査察の流れ

情報を得る方法としては、電話で受ける場合や投書があります。
その他にも、警察や公共料金等をチェックする事業所からのメールや、職員と子供たちの何げない会話もきっかけのひとつになります。

また「このようなものを見た」とメディアからの通報もあります。
Facebookなどのソーシャルメディアでは、被疑者が面白がり虐待写真などを掲載するケースがあるのでチェックが大切です。このようなデータは、動かぬ大きな証拠となります。

このようにRSPCAの組織的で高度な「組織体系」「職域制限」「職員教育」により、常にスタンダードを守り、組織として統一した基準で、動物虐待から動物を守る取り組みができ、誰が行っても同じ対応が図られます。

先生方はこう言われます。
人間に接触していない野生動物は、食うか食われるかの危険性は伴いますが、人間と関わっていないので動物福祉はありません。人間と動物が関わることではじめて「福祉」が関わります。人間が関わる場合は、私たち人間は責務として必ずそれを守る必要があります。

プロフィール

英国王立動物虐待防止協会 /  RSPCA

英国王立動物虐待防止協会 / RSPCA

1824年設立の世界最古の動物福祉団体。 今までに数多くの動物にかかる法律の制定と改正に多大な貢献をし、2006年の英国動物福祉法改正に、大きな力を発揮しました。
 現在、約300名のアニマルインスペクターを擁し、イングランドとウェールズで動物虐待の調査や、動物の救助、適切な飼養管理の指導等に力を注いでいます。
 また、動物保護施設や動物病院を運営するとともに、子どもたちへの「いのちの教育・動物福祉教育」にも力を入れています。

ホームページ: http://www.rspca.org.uk/

ポール・リトルフェアー氏<br />(RSPCA 国際部門担当)
ポール・リトルフェアー氏
(RSPCA 国際部門担当)

RAPCAの教育後インスペクターを経て、国際部門のアジアを担当。現在はアジアのみならずすべての地域を見ています。
フィル・ウィルソン氏<br />(RSPCA 告発訴訟担当マネージャー)
フィル・ウィルソン氏
(RSPCA 告発訴訟担当マネージャー)

前職は警察官。その後RSPCAの教育を受け「査察官」になり14年間の勤務の後、現在まで12年間告発訴訟の担当をされています。

英国王立動物虐待防止協会 /  RSPCA

動物との共生を考える連絡会

人と動物が共に幸せに暮らせる、「いのち」にやさしい社会の構築に向かって、目標を同じくする団体、法人、個人が、連合体として様々な活動を行い、国民の間に「動物にも福祉を」の意識を広め、根付かせることを目的に本会を設立しました。

支援センター ホームページ: http://www.dokyoren.com/