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知ろう!学ぼう!

国際シンポジウム - 東日本大震災が動物に及ぼした影響に関する国際シンポジウム

先日ブリオは、「ヒューメイン・ソサイエティー・インターナショナルHumane Society International」、「動物との共生を考える連絡会」さん主催の、2日間に渡る「東日本大震災が動物に及ぼした影響に関する国際シンポジウムに参加してきました。

ヒューメイン・ソサイエティー・インターナショナル(Humane Society International, HSI)は、世界中の動物の福祉の向上を目的とした、国際的に活動する世界最大級の動物福祉団体です。今回動物への放射能の影響に関する調査を、多額の寄付金とともに北里大学研究チームに委託し、このようなシンポジウムが実現しました。

今回のシンポジウムでは、東日本大震災が、人だけでなく動物たちにどのような影響を与えたのか、そこから学び後世に伝えることは何か、そして災害に対する正しい知識と災害予防と対策を学んできました。

東日本大震災が動物に及ぼした影響に関する国際シンポジウム

  • 座長:和田成一氏(北里大学)
  • 座長:夏堀雅宏氏(北里大学)
  • 伊藤伸彦氏(北里大学)
  • 河又淳氏(千葉小動物クリニック)
  • 柿崎竹彦氏(北里大学)
  • 佐藤利弘氏(佐藤家畜診療所)
  • 今本成樹氏(新庄動物病院)
  • 川崎亜希子氏(公益社団法人 日本動物福祉協会)
  • 増田国充氏(ますだ動物クリニック)

2011年3月11日に、東日本大震災が起きてからすでに2年と5ヶ月が経過しましたが、現在のところ復興はおろか復旧も今だ途中です。
その原因のひとつは、誰もが知っているとおり原子力災害が同時に発生したことです。震災で多くの人命も失われましたが、同時に多くの動物も苦痛を味わい命を落としました。
原子力災害は、人と動物の生活に大きく影響を与え、またさまざまな問題が未解決です。

産業動物に与えた被害

警戒区域内の産業動物頭数

地震や津波による産業動物への直接的な被害はほとんどありませんでしたが、震災からの避難、そして多くは原発事故からの避難指示が出されたことにより、飼育者が警戒区域内に立ち入りにくくなったことによる餓死が大半でした。
また食用動物は、食品として流通する可能性があったため、警戒区域外へ移動をさせることは認めておらず、2011年5月12日に政府から全頭安楽死処分の指示が出ました。
このような中、餓死や殺処分をまぬがれ野に放たれた産業動物も多く、現在に至っています。

伴侶動物に与えた被害

伴侶動物に与えた被害

震災翌日の3月12日に、総理の指示で20km圏内に住む住民に避難指示が出されました。その時住民は、一時的な避難であり、すぐ戻れると考え、多くの人たちが動物を鎖でつないだまま、または室内に置いたまま避難しました。

警戒区域設定(4月22日)前の状況
  • 公的な動物救援活動が行われないことから、民間団体が救護活動を行いつながった命もあった一方で、勝手な動物の持ち去りや、返還の際の高額な金銭トラブルなどの問題があった。
  • 放射能汚染についての情報が不足している中、充分な安全対策を行わないまま動物救護活動が続けられた。
警戒区域設定(4月22日)後の状況
  • 公的な動物救援対応の初動の遅れ。
  • 放射線被ばくの問題や、立ち入れないなどといった著しく制限された中での非効率な活動。
  • 収容施設の不足。
  • 動物可の避難場所の不足。

忘れられた学校飼育動物、展示動物

忘れられた学校飼育動物、展示動物

学校飼育動物に関しては、人間が逃がした形跡がある場所以外はほぼ全滅の状態でした。
災害避難時、まず子供たちを守らなくてはならない切迫した状況の中で、学校飼育動物は忘れられた存在でした。管理者が誰なのか、責任の所在も不明確であることから、今後の問題が多く残されました。

またダチョウなどの展示動物においても、今後は法律により、緊急災害時のフードや飼育環境などに対する必要な備えや、避難計画の提出や避難訓練などを事業者に義務化させる必要があります。

野生動物

野生動物

住民がいなくなった避難地域には、狩猟や捕獲、駆除の減少から、猪や熊などの野生動物の生息域が拡大しています。人間を恐いと思わない野生動物(第二世代)も現れ鳥獣被害も増加しています。
また野生動物が生息する森林は、特に放射能をためやすく循環するといえます。

動物にとって警戒区域割りは、意味をなさないものなので、今後他県においても被害拡大の恐れが危惧されます。

また人が住まなくなったことによる、ネズミなど齧歯(げっし)類の増加による感染症の恐れや、放畜・逸走による野生化した牛や豚(イノブタ)の繁殖問題も拡大しています。

  • 伝染病の問題
  • 汚染地域周辺の農作物被害⇒畜産業ダメージ
  • ヒトへの被害
  • 野生牛との交通事故多発
    ※原発復旧工事や除染作業、インフラ整備で交通量が増した場所での野生化した牛との交通事故

動物の内部被ばくについて

動物の内部被ばくについて

放射性物質で汚染された牧草を餌とする牛については、内部被ばくが生じていました。また警戒区域内に取り残されていた犬や猫に関しても、暮らしていた場所の汚染度に相関し、体内汚染がありました。
しかしいずれの動物でも、清潔な水と餌で飼育することにより、体内の放射能セシウムはしだいに体外に排出され、減少することが確認されています。「一度汚染された動物と人間が、一緒に暮らしたら被ばくする」このような話しは間違いといえるでしょう。

放射線被害については、現時点では、急性放射線障害である放射線火傷や脱毛、出血性下痢などの症例は、牛や犬、猫では認められていません。
造血器障害による未梢血中の白血球低下や白血病、固形がんの増加においても断定できるデータは得られず今後のデータの積み重ねが必要だそうです。

シェルターにおける現状の問題

  • 慢性的なボランティアの不足
  • 内部被ばく問題などによる成猫の譲渡の停滞
  • 警戒区域内動物の今後の保護とTNR(捕獲、不妊手術&リリース)活動などの未定
  • 仮設住宅内の動物への支援(シェルターとの格差)
  • 先がみえないシェルターの運営と終息

災害時の動物救護について

日本の動物行政は、その利用目的により農林水産省、厚生労働省、環境省などに分かれ、各地方行政組織もそれに準じているため、今回のような想定していなかった原子力災害において、初動が遅れた原因となりました。
このようなことを改善するため、今後原子力災害の恐れのある地域の獣医師会などでは、災害時の対応などが検討されています。

今後の行政・獣医師会の課題

  • 行政・獣医師会による動物避難体制の整備
  • 県としての動物管理センターの設置
  • 県と獣医師会の防災協定
  • 義援金の申請・交付システムの見直し
  • 事前に近隣の獣医師会との協力要請
  • 県や獣医師会による震災時の飼い主教育
  • 災害地経験を持つ指揮者の確保
  • 災害時のボランティアの確保と選別

福岡県獣医師会の活動

VMAT(災害派遣獣医師チーム)の運用
専門教育を受けた獣医師、動物看護士4~5名で構成
災害発生から迅速に活動開始できる体制を構築

佐賀県にある玄海原子力発電所の20km圏内においての大規模地震や津波、原子力災害を想定。
2012年には、福岡県総合防災訓練で動物との同行避難訓練が実施されました。
「緊急災害時におけるガイドライン2012」ではVMAT(災害派遣獣医師チーム)の養成と運用が明記されています。 VMATの運用は全国初の事例です。

福岡県獣医師会の活動

災害時における一般飼い主にお願い

東日本大震災で多くの動物が立ち入り禁止区域に残され死んでいったことを踏まえ、国は2013年8月20日「原則 同行避難」を打ち出しました。
しかし、これを実現するためには、平時から飼い主が適正な飼育管理・健康管理を行い飼い主として社会への責任を果たなければなりません。

  • 各種予防の徹底(不妊手術、ワクチン接種、ノミ・ダニ対策、フィラリア等)
  • マイクロチップ、迷子札など
  • しつけ
    • クレートトレーニング
    • 飼い主以外が世話をすることも考えられるため社会性が必要
  • 同行避難関連用品の準備(最低7日~10日分)

    ペット防災用品

    ペット防災用品リストダウンロード

  • 避難ルートの確認

北里大学獣医学部の伊藤伸彦教授は演者のまとめでこう語ります。
2012年にチェルノブイリを訪問した際、事故当時の伴侶動物について聞き取り調査をしたところ、食用動物の多くは、警戒区域外に搬送されたが、犬は連れ出すことが許されませんでした。しばらくは警戒区域内で活動していた軍人に餌をもらっていたそうですが、まもなく犬は全頭銃殺されたそうです。
一方日本ではその当時より犬や猫の地位は向上しましたが、原発事故は全く想定されていなかったこともあり、動物に対する対応は後手となり、結果「餓死」という銃殺より無残な仕打ちを動物に対して行う結果となりました。
今回の日本における動物に関わる悲惨な事実を、将来いかなる国においても経験しないよう、そして日本を含めた多くの動物保護団体は、同じ過ちを繰り返さないよう政府や自治体に対応を働きかけるべきでしょう。

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プロフィール

ヒューメイン・ソサイエティー・インターナショナル(Humane Society International)

ヒューメイン・ソサイエティー・インターナショナル(Humane Society International)

ヒューメイン・ソサイエティー・インターナショナル(Humane Society International, HSI)は、世界中の動物の福祉の向上を目的とした、国際的に活動する世界最大級の動物福祉団体です。
その支援の対象動物には、ペット、家畜、役馬及び野生動物など。
HSIの活動は多岐にわたり、地域社会を直接支援する人道教育、動物の頭数管理の解決策、動物専門職の訓練プログラムなどの提供や、動物福祉に影響を及ぼす政策などに対するキャンペーンの実施、さらには、災害時などの動物救護にかかわる支援を提供しています。

ホームページ:http://www.hsi.org/

動物との共生を考える連絡会

動物との共生を考える連絡会

人と動物が共に幸せに暮らせる、「いのち」にやさしい社会の構築に向かって、目標を同じくする団体、法人、個人が、連合体として様々な活動を行い、国民の間に「動物にも福祉を」の意識を広め、根付かせることを目的に本会を設立しました。

支援センター ホームページ:http://www.dokyoren.com/

発表者の皆様

  1. 座長:夏堀雅宏氏 (北里大学)
  2. 和田成一氏 (北里大学)
  3. 佐藤利弘氏 (佐藤家畜診療所)
  4. 柿崎竹彦氏 (北里大学)
  5. 河又淳氏 (千葉小動物クリニック)
  6. 今本成樹氏 (新庄動物病院)
  7. 川崎亜希子氏
    (公益社団法人 日本動物福祉協会)
  8. 増田国充氏
    (ますだ動物クリニック)
  9. 伊藤伸彦氏(北里大学)
  10. 山崎佐季子氏( Humane Society International )
  11. 山口千津子氏
    (公益社団法人 日本動物福祉協会)
  12. Andrew N. Rowan氏
    ( Humane Society International )

発表順